事故から13年…福島第一原発のいま 進まぬデブリ取り出し・増加する放射性廃棄物…続出する新たな課題 (24/03/06 21:00)

東京電力・福島第一原発では、2023年に処理水の海洋放出が開始された。別の作業ではトラブルが続発。廃炉の現場のいま、そして新たに見えてきた課題を見つめる。

<1Fで相次ぐトラブル>
2024年2月、作業員の「弁の締め忘れ」が原因で、汚染水を含む水1.5トンが漏えい。2023年10月には別の場所で、作業員が放射性物質を含む水を浴びて汚染されるなど福島第一原発ではトラブルが相次いで発生している。

<処理水の海洋放出を開始>
一方、廃炉の本丸・燃料デブリの取り出しに必要なスペースを確保するためとして、2023年に東京電力は処理水の海洋放出を開始。
IAEA・国際原子力機関は科学的に安全との評価を示した。しかし、中国などが日本産海産物の輸入を禁止していて、東京電力が賠償を支払った分だけでも損害は43億円に上っている。

<漁師の新たな決意>
福島県相馬市・松川浦で行われた進水式。
「人生に一回あるかないかの、とても大事な大仕事。これから今以上に頑張って漁に出て、また復興・本格操業に向けてやっていかなくてはという新たな気持ち」と話すのは、相馬双葉漁協の組合長で漁師の今野智光さん。2024年1月、新たに造った「稲荷丸」を進水させた。
今野さんは「これから本格操業に向けて、廃炉までは20~30年かかるということで、若い人に頑張ってもらわないと相双の漁業が成り立っていかない。自分の息子も40歳そこそこ。親として最後の仕事ということで、頑張ってもらうためにもこの新造計画を立てた」と話す。

<本格操業間近での海洋放出>
原発事故の後、福島の漁業は停止。試験的な漁が始まったのは、2012年だった。
当時、今野さんは「不安の方が大きい。いくら検査して大丈夫と言っても、消費者にどの程度理解してもらえるか」と話していた。
検査を重ねて安全を確認し、本格的に漁を再開できる段階にきていた2023年8月、処理水の海洋放出が始まった。

<消費者の応援も気を引き締めて>
今野さんは「本県に関しては、さほど懸念したような不安材料がなくて良かった。今は、福島頑張れと皆さん協力して貰っているけれど、果たしてそれがいつまで続くのか」と話す。ただ、中国の禁輸措置などで影響が出ていることから「喜んでばかりはいられない」と気持ちを引き締める。

<東電に求める”緊張感”>
福島第一原発でのトラブルが絶えない現状に、東京電力に求めるのは「緊張感を持って臨むこと」だと今野さんはいう。
「緊張感をもってやってください。緊張感というのは、放出だけの緊張感ではない。今やっている作業は、東電全体が廃炉に向けてやっている作業。その作業全体を、緊張感持ってやれっていうことなんだ」

<増える放射性廃棄物は?>
原発事故の発生から間もなく13年。新たな課題も生まれている。
「汚染水を浄化する作業」で使ったフィルターは、放射性物質を吸着して放射線量が極めて高い廃棄物となる。今後も増え続ける放射性廃棄物を、どう保管していくか、そしてどう処分するのか。

<進まぬ試験的なデブリ取り出し>
さらに、福島第一原発2号機で計画していた「燃料デブリの試験的な取り出し」は、3度目の延期が決定。1・2・3号機の原子炉内に、合わせて880トンあると見られている燃料デブリは、1グラムも取り出せていない。

<進路を防ぐ堆積物>
なぜ3度目の延期になったのか?…78億円もの国の予算をかけて開発した「専用ロボット」は、デブリに到達するまでのルートが堆積物でふさがれていることから、2023年度中の使用を断念。「試験的なデブリの取り出し」の開始期限を、半年以上先送りした。

<2051年までに廃炉完了>
試験的な取り出しが遅れていることで、全体への影響というのはあるのか?経済産業省の木野正登参事官は「廃炉については2051年までに完了させるという目標でやっている。拙速にやって、大きなトラブルを起こしてしまって、後戻りできなくなってしまうというのが怖い。多少の時間の遅れはあるが、なんとか2051年までに間に合わそうと」と話す。

当初示された廃炉の完了までの期間は「30年から40年」 事故から13年が経とうとしているいま、残された期間は「17年から27年」…「廃炉完了の姿」も示されないまま時間だけが進んでいく。

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