川内村の“森の香り”をジンに閉じ込めて 自然や人に魅せられ蒸留所をはじめた男性の挑戦【福島発】

福島県川内村にできた蒸留所。ここで作られるのは“福島の香り”がするジンだ。村の自然や人の温かさに魅了された代表・大島草太さんは、村の木の実を使ったジンを世界に発信しようと奮闘している。

<空き倉庫を使った蒸留所>
2024年11月に福島県川内村に開所した、ジンの蒸留所「naturadistill(ナチュラディスティル)」。代表の大島草太さんが、構想から2年がかりで完成にこぎつけた。
大島さんは「皆さん、厳しくも温かく見守ってくださる。仲間になってくださる方々と思っているので、すごく心強く思っています」と語る。
空き倉庫を改修した蒸留所に、蒸留器が運びまれたのは2024年8月。これで一度に300リットルを製造できるため、年間6000リットルを製造・販売する予定だという。

<村の自然と人の温かさに魅了>
大島さんが村に蒸留所を作ったのは、福島大学時代に授業やボランティアで訪れ、豊かな自然と村民の温かさに魅了されたのがきっかけだ。
開所に向け準備が進む蒸留所には、交流が続いている川内村の遠藤雄幸村長も応援に駆けつけた。遠藤村長は「新しく入った地域で自分が地域にどう関わっていくか、それを身をもって表現してくれる人は、地域にとっても大切な存在」だと語る。

<良いものを作れば人が集まる>
原発事故の後、避難指示が出された川内村。帰ってきた村民は8割を超えているが、若い世代の割合は2割ほどと少なく、人口減少と少子高齢化が課題になっている。
大島さんは「外から人が集まるような、それくらい良いモノが作れれば、どれくらい田舎でも行きたい田舎になると思う。川内の良さを、いろいろな人に知って貰うためにも頑張っていこうかと思う」と話す。

<福島の香り>
大島さんはこれまで、福島のモノを生かすことに力を注ぎ、規格外となった県内産の果物を使ってハーブティーなどを販売してきた。
今回、注目したのが「福島の香り」だ。ジンは植物で香りづけした蒸留酒。そこで村に自生する「かやの実」に目を付けた。
「川内村は9割が森林で、人の手が加わっていない林・森の沢山ある。それぞれの香りがあるので、そういったところに着目してやっていきたい」と大島さんはいう。

<海外からみたFUKUSHIMA>
大島さんが「福島のモノ」にこだわる理由。それはワーキングホリデーで訪れたカナダでの辛い経験だった。大島さんは「福島のイメージが悪いというか、“そこから来たお前も汚い”と友人に言われた事があった」と語る。
風評を受けた悲しさ。「そんな事はない」と反論できなかった自分。その悔しさがエネルギーとなっている。
「自分の目で、この土地の良いモノもそれまで見てきたのに、それだけ良いモノがあるのにというもどかしさがあった。世界に向けてひっくり返してやろうというところが原点になっている」と大島さんは語る。

<日本らしい森の香りのジン>
ジンの蒸留が始まったのは2024年10月下旬。“かやの実”の他に、福島県内で採れたニオイコブシ、クロモジなど5種類をブレンドした。大島さんによると、日本の植物を使っているので、日本らしい森の凛とした香りの中に、後半に柑橘系のさわやかな香りがくるという構成だという。
そして、ついにできあがった初めてのジン「固有種蒸留酒」。クラウドファンディングの支援者などが集まって完成を祝った。

<始まったばかりの挑戦>
ジンと村の食材を扱うレストランバーを2025年2月に設ける「naturadistill」。代表の大島さんは「本当にお酒が持つ、人の心を動かす力。人の足も動かすと思うので、来てもらえる力はある。来ていただくことで、また新しいものを生み出す。そういった流れを作っていくことで、より盛り上げていきたい」と話す。福島の魅力を世界に発信する大島さんの挑戦は、まだまだ続く。

ジンは2024年11月中旬から蒸留所1階の販売所や酒店、オンラインショップで販売される。

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