<稲作を盛り上げるプロジェクト>
田植えの時期を迎え、本格的な稲作シーズンが始まった福島県西会津町。食味の良いコメで全国的に高い評価を得てきた「米の名産地」で、2023年に産声をあげたプロジェクトがある。
それが「石高プロジェクト」。スマートフォンのアプリを用いてコメ農家と消費者が一緒に稲作を盛り上げる取り組みだ。
地域おこし協力隊としてデジタル戦略の推進を担う長橋幸宏さんは、この「石高プロジェクト」に中心メンバーとして関わってきた。「水路の整備や草刈りなど手伝えることを、みんなで稲作というものを支える。地域として稲作を支える環境、場を作れないかというような話をしていたのが経緯」だと長橋さんはいう。
<農家への貢献度でコメと交換>
「石高プロジェクト」の仕組みを簡単に説明すると…収穫前の時期、参加者はコメを「石」ポイントを通じて先払いで購入、またはボランティアやイベントへの参加、SNSでの宣伝などで「農家に貢献」する。
そして収穫後、その貢献度を表す「石高」に応じてコメと交換できる「米手形」を受け取ることができる。
交換できるコメの量はその年の収穫量によって増減するため、コメ農家は不作の年でも参加者と経営リスクを分け合えることが特徴だ。
<農家 消費者の顔が見える>
石高プロジェクトに登録しているコメ農家の橋谷田淳さん。2023年は猛暑の影響で稲の育ちが悪くなる「高温障害」に悩まされたが、プロジェクトの参加者に対してコメの出来具合などの現状を積極的に公開してきた。
橋谷田さんは「今までは田植えして収穫までは通年通り普通にこなしていたが、今は消費者の顔が見えるので、その分稲を観察するようになった。よりいいものをより多くということを意識しながらやるようになったので、営農的にもすごくプラスになった」と話す。
<消費者 これまでにない経験>
一方コメ作りに消費者が深く関わる仕組みは、参加する人にとっても大きな魅力の1つだという。
東京都に住む山田谷直行さんは、仕事で西会津町を訪れたことをきっかけに石高プロジェクトに関心を持ち参加した。「自分自身が通ってお世話になって、いろいろ活動している場所のお米を食べるっていうその行為自体が、僕にはしっくり来るなというところがある」と、自分が食べるコメに、自分自身が関わっているという実感が持てることが、これまでにない体験だと話す。
<独自の付加価値で稲作を守る>
寒暖差が激しい気候や飯豊山の伏流水に恵まれ、昔から稲作が盛んに行われてきた西会津町。しかし、高齢化の影響でコメ農家の数は近年減少が続き、耕作放棄地の割合は2021年度で1割弱と年々増加傾向にあるという。
長橋さんは、地域の稲作文化を守るための「石高プロジェクト」を独自の付加価値として定着させたいと考えている。
「自分の食べるものと、作ってくれる人、全部が繋がっていること。こういう縁を感じながら毎日の食を楽しむという。だから普通のお米の消費体験というか、購入体験とは別物だと思っているところ」と長橋さんはいう。
<西会津を未来に続いていく場所に>
2023年11月には東京で参加者とコメ農家の交流イベントを開催。さらに、2024年の「石高プロジェクト」に登録する農家は2023年より2軒多い4軒の予定で、参加者は100人以上を見込むなどその広がりに手応えを感じている。
地域おこし協力隊の長橋幸宏さんは「関係人口と呼ばれる人たちが増えることで、僕たちが西会津を面白く楽しく、未来に続いていく場所にしたいっていう思いとか、活動を一緒に共有できる仲間が増えることを願っているというか、そういう楽しい雰囲気、お祭りのような雰囲気になっていけばいいなと思っています」と話した。
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