岩手県盛岡市の整備工場で、1台の古い軽ワゴン車の修理が進んでいました。1995年に製造されたスバル「サンバー・ディアスクラシック」です。
岩手スバル整備士 飯岡和之さん
「物(部品)がなくて仕方がないので、次の型のサンバーの部品を使って配線を加工して、とにかく大変でした」
この車は東日本大震災の直後に支援物資として、当時の大槌町職員・佐々木健さんのもとに東京のボランティア団体から届けられました。
車のボディは大槌町の町民やボランティアなどのメッセージで埋め尽くされています。
佐々木健さん
「言葉は発すると消えてしまうけれど、言葉としてここに書かれていることが、強く内側に響いてくる感じがしました」
去年8月、サンバーは古くなってあちこちが壊れ、廃車の危機にありました。
佐々木健さん
「12年という時間の歴史が刻まれている」
ところが、この車の新聞記事をディーラーの社長が目にしたことで運命が大きく変わります。
岩手スバル自動車 間野英雄 社長
「この車をいろんな人に見てもらえる機会がつくれれば。もう一回、頑張ってみないか」
盛岡市のディーラーが車を引き取り、東日本大震災を伝える「走る震災遺構」として保存したいと申し出たのです。
13年前、佐々木さんに車を送った東京都東久留米市の荒井和男さんです。
サンバーの寄贈者 荒井和男さん
「心配だったのは、新車じゃないのでいつまで走れるかな」
車に、最初にメッセージを書いたのは東久留米市の小学生でした。
サンバーの寄贈者 荒井和男さん
「みんなにこういう車があったということを知っていただきたい」
大震災からの歳月をサンバーと共に歩んできた佐々木さん。
佐々木健さん
「これをどう次にいい意味でつなげていくか、残していくか、忘れないということも含めて、この車に課せられた使命というものはまだまだあるんだろうなと思います」
町の復興に伴走してきた1台の車は今後、教訓を伝える震災遺構としての役割を担います。
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